Chapter 9: 薬草採取の決意 メグミンは涙ながらにそう宣言し、カズマをそっと抱きしめたまま、深い眠りに落ちた。小さな温もりを感じながら、彼女は久しぶりに安らかな眠りについた。 翌朝、朝日が窓から差し込み、メグミンは目を覚ました。隣にはカズマが寝ている。しかし、いつもと様子が違っていた。カズマはすでに起きており、小さな手でメグミンの髪を引っ張って遊んでいるのだ。 「もう!」 メグミンは少しむっとしながらも、カズマの無邪気な笑顔を見て、思わず顔がほころんだ。赤ん坊の笑顔には、人を癒す力がある。昨日までの疲れも、カズマの笑顔を見た途端、どこかへ吹き飛んでしまったかのようだった。 「朝から元気だね」 メグミンはカズマの頬を優しく撫でた。カズマは嬉しそうに笑い、メグミンの指を握った。その小さな力が、メグミンの心を温かくした。 朝食の後、メグミンはカズマの世話をしながら、ふと考えた。カズマが元の姿に戻るまで、あと数日。このまま何事もなく時間が過ぎるのを待つだけなのか。何かできることはないのだろうか。 ふと、ウィズの店で聞いた話を思い出した。カズマの状態を診察してもらった際、ウィズは言っていた。「解毒剤を作るには、貴重な薬草が必要になるかもしれません」と。その時は、まさか自分が薬草を探しに行くことになるとは思ってもみなかった。 「よし、行ってみるか」 メグミンは小さく呟いた。カズマのためなら、多少の危険を冒しても構わない。それに、爆裂魔法を封印している今、何か目標がないと退屈してしまう。 準備を整え、メグミンはカズマを連れて再びウィズの店へと向かった。今日は昨日と違い、カズマはすんなりと抱っこ紐に収まってくれた。もしかしたら、メグミンの匂いが好きになったのかもしれない。 ウィズの店に着くと、ウィズはいつものように笑顔で迎えてくれた。 「あら、メグミンさん。今日はどうされました?」 「カズマの様子を見てもらいたくて。それと、薬草のことも聞きたいんです」 メグミンは答えた。ウィズはカズマを抱き上げ、丁寧に診察した。 「うーん、順調に回復していますね。この調子なら、あと数日で元の姿に戻るでしょう」 ウィズは安心したように言った。メグミンもほっと胸を撫で下ろした。 「ところで、薬草のことですが……」 メグミンは切り出した。ウィズは少し困ったような顔をした。 「ええ、解毒剤を作るには、『月光草』という薬草が必要なのですが、それがなかなか手に入らなくて」 「月光草、ですか?」 「はい。その薬草は、魔力の強い場所にしか生息せず、しかも夜にしか咲かないんです。採取するには、それなりの覚悟が必要になります」 ウィズは真剣な表情で言った。メグミンは少し躊躇した。夜の森は危険だ。魔物も多いし、視界も悪い。赤ん坊のカズマを連れて行くのは、無謀かもしれない。 しかし、カズマの顔を見ると、メグミンは決意を新たにした。カズマを元の姿に戻すためには、多少のリスクは覚悟しなければならない。それに、自分は紅魔族最強の魔法使いだ。どんな困難にも立ち向かえるはずだ。 「分かりました。私が月光草を探してきます」 メグミンは力強く言った。ウィズは驚いたような顔をした。 「メグミンさんがですか? でも、夜の森は危険ですよ。それに、カズマさんも一緒ですし……」 「大丈夫です。カズマは私が守ります。それに、爆裂魔法は使えませんが、他の魔法なら使えますから」 メグミンは自信満々に答えた。ウィズは少し考えた後、諦めたように頷いた。 「分かりました。メグミンさんの覚悟、しかと受け止めました。ですが、くれぐれも無理はしないでくださいね。もし危険を感じたら、すぐに引き返すように」 「はい、ありがとうございます」 メグミンは頭を下げた。ウィズは月光草について詳しく教えてくれた。生息場所、特徴、採取方法……メグミンはウィズの話を真剣に聞き、頭の中に叩き込んだ。 店を出ると、メグミンはカズマを抱きしめた。 「カズマ、必ずお前を元の姿に戻してやるからな」 メグミンは決意を胸に、危険な森へと向かう準備を始めた。まずは、夜の森でも安全に移動できるように、明かりを用意しなければならない。それに、魔物と戦うための武器も必要だ。メグミンは、冒険者ギルドに立ち寄り、必要な道具を揃えることにした。 ギルドに着くと、アクアとダクネスがいつものように騒いでいた。 「あら、メグミンじゃない。どうしたの、そんなに慌てて」 アクアが声をかけてきた。メグミンは少しむっとしながらも、用件を伝えた。 「夜の森に行くための道具を揃えたいんだけど、何かオススメはない?」 「夜の森? 何をするつもりなの?」 ダクネスが興味津々で聞いてきた。メグミンは、カズマのために月光草を探しに行くことを話した。 「ええっ!? 夜の森に!? メグミン、正気なの? そんな危ないところに、カズマを連れて行くなんて!」 アクアは驚愕したように叫んだ。ダクネスは少し興奮したような顔をしていた。 「夜の森か……。どんな魔物がいるのだろう。ぜひとも、この剣で試してみたいものだ」 「ダクネス、あんたは黙ってて!」 アクアはダクネスを睨みつけた。そして、メグミンに真剣な顔で言った。 「メグミン、お願いだからやめて。夜の森は本当に危険なのよ。カズマに何かあったら、どうするの?」 「大丈夫だって言ってるでしょ。それに、私は紅魔族最強の魔法使いよ。アクアに心配される筋合いはないわ」 メグミンは強気に言い返した。アクアは少し悲しそうな顔をした。 「メグミン……。あなたはいつもそう。無茶ばかりして……」 「これは、私の問題だ。アクアには関係ない」 メグミンは冷たく言い放ち、ギルドのカウンターへと向かった。必要な道具を注文し、お金を払った。 「メグミンさん、夜の森に行くんですか?」 カウンターの受付嬢が心配そうに聞いてきた。メグミンは少し驚いた。自分の行動は、そんなに目立っているのだろうか。 「ええ、まあね」 「夜の森は本当に危険ですよ。くれぐれも気をつけてくださいね。何かあったら、すぐにギルドに連絡してください」 「ありがとう。でも、大丈夫よ」 メグミンは笑顔で答えた。受付嬢はまだ心配そうな顔をしていたが、それ以上は何も言わなかった。 ギルドを出ると、メグミンは深呼吸をした。いよいよ、月光草を求めて夜の森へと向かう。不安がないと言えば嘘になるが、カズマのためなら、どんな困難にも立ち向かえる。 宿に戻り、メグミンは最終的な準備を始めた。まずは、明かりの準備だ。魔法で作ったランタンをいくつか用意し、それぞれに魔力を込めた。これで、夜の森でも十分な明るさを確保できるはずだ。 次に、武器の準備だ。爆裂魔法は使えないが、他の魔法なら使える。メグミンは、小型の爆発魔法をいくつか用意し、いざという時に備えた。それに、護身用の短剣も持っていくことにした。 準備が整うと、メグミンはカズマを抱きしめた。 「カズマ、一緒に行こうね。必ず、月光草を見つけて、お前を元の姿に戻してやるからな」 メグミンは、カズマを抱きしめたまま、ゆっくりと立ち上がった。 その日の午後、メグミンはカズマを連れて再びウィズの店へ。 ウィズはカズマの状態を診察し、回復が順調であることを確認するが、同時に、解毒剤の材料となる貴重な薬草の採取をメグミンに依頼す

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