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赤ちゃんになった俺を世話するメグミンがやたらと色っぽい件について
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1: 災難の始まり
2: 初めての外出
3: 爆裂魔法への執着
4: 紅魔族の少女
5: 熱
6: 回復と新たな日常
7: 外出の試練
8: 言葉の兆し
9: 薬草採取の決意
10: 下見と月光草
11: 秘密の隠し場所
12: 迷子のカズマ
13: 優しい温もり
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Chapter 3: 爆裂魔法への執着 メグミンは目を覚ました瞬間、昨日の屈辱を思い出した。爆裂魔法を放てなかった。紅魔族として、メグミンとして、あってはならない事態だ。 隣で眠るカズマを見た。小さな胸が上下している。平和そうな寝顔だった。 「今日こそは絶対に放つ」 メグミンは静かに、だが強い決意を込めて呟いた。 問題はカズマだ。昨日のように連れて行けば、また泣いて邪魔をされる。ならば答えは一つだ。 「部屋に残していく」 メグミンは立ち上がり、外出の準備を始めた。杖を手に取り、外套を羽織る。カズマはまだ眠っている。今がチャンスだ。 メグミンはそっとドアに向かった。足音を立てないように、慎重に歩く。ドアノブに手をかけた。 「ふぇ」 カズマの声がした。メグミンは固まった。 振り返ると、カズマが目を覚ましていた。小さな目がメグミンを捉えている。 「まだ寝ていろ。すぐに戻る」 メグミンは囁いた。カズマの表情が曇った。 メグミンはドアを開けた。カズマが泣き始めた。 「ふぇええええん!」 「泣くな! 私はすぐ戻る!」 メグミンは叫んだが、カズマの泣き声は止まらなかった。むしろ激しくなっていく。 「くっ……」 メグミンは葛藤した。ここで戻れば、また爆裂魔法を諦めることになる。だが、このままカズマを泣かせたまま出て行けば―― 「いや、行くぞ。私は紅魔族だ。爆裂魔法は譲れない」 メグミンは決断した。ドアを閉めて、部屋を出た。 カズマの泣き声が廊下に響いた。メグミンは足を速めた。階段を降りる。宿の外に出る。 泣き声がまだ聞こえる気がした。メグミンは耳を塞ぎたくなったが、杖を持つ手を離せなかった。 「すぐに戻る。それまで我慢しろ、カズマ」 メグミンは街を抜けて、草原へ向かった。 *** 草原に着いた時、メグミンの心は晴れなかった。カズマの泣き声が頭から離れない。 「気にするな。赤ん坊は泣くものだ」 メグミンは自分に言い聞かせた。杖を構える。魔力が体内で渦巻き始めた。 「そうだ、これだ。この感覚。爆裂魔法こそが私の全てだ」 メグミンは詠唱を始めた。 「我が名はメグミン! 紅魔族随一の魔法使いにして――」 カズマの泣き顔が脳裏に浮かんだ。メグミンは首を振った。 「集中しろ!」 「闇より暗き漆黒を束ね――」 小さな手が彼女の服を掴む感触を思い出した。温かくて、柔らかくて―― 「くそっ!」 メグミンは詠唱を止めた。魔力が乱れる。深呼吸をして、気持ちを落ち着ける。 「もう一度だ」 メグミンは杖を構え直した。 「我が名はメグミン――」 「ふぇええええん!」 カズマの泣き声が聞こえた気がした。いや、幻聴だ。草原にカズマはいない。 「紅魔族随一の――」 「メグミン!」 本物の声がした。メグミンは振り返った。 冒険者が三人、こちらに走ってきていた。男が二人、女が一人だ。メグミンは彼らを見たことがある。ギルドでよく見かける冒険者たちだ。 「何の用だ」 メグミンは不機嫌そうに聞いた。邪魔をされたくない。 「メグミン、お前、赤ん坊を部屋に置いてきたのか!」 男の一人が叫んだ。メグミンは眉をひそめた。 「そうだが、それが何か」 「何かじゃない! 赤ん坊が泣き叫んでるぞ! 宿中に響いてる!」 女の冒険者が言った。メグミンは罪悪感を覚えたが、それを押し殺した。 「すぐに戻る。それまで――」 「すぐじゃダメだ! 今すぐ戻れ!」 もう一人の男が怒鳴った。メグミンは苛立った。 「私は爆裂魔法を放たなければならない。紅魔族として、一日たりとも欠かすわけには――」 「そんなこと知るか! 赤ん坊を優先しろ!」 三人は真剣だった。メグミンは彼らの目を見た。非難の色が濃い。 「お前たちに何がわかる」 メグミンは低い声で言った。 「私は紅魔族だ。爆裂魔法は私の存在意義だ。それを理解しろ」 「理解できるか! お前は母親だろう!」 女の冒険者が叫んだ。メグミンの顔が真っ赤になった。 「違う! あれはカズマだ! 薬で赤ん坊に――」 「またその言い訳か。誰も信じてないぞ」 男の一人が呆れたように言った。 「本当だ! ウィズに聞け!」 「ウィズは『秘密』だって言って教えてくれなかった」 メグミンは絶望した。ウィズめ、余計なことを。 「とにかく、今すぐ戻れ。でなければ、ギルドに報告する」 三人は本気だった。メグミンは悔しさで拳を握った。 「わかった……戻る」 メグミンは杖を下ろした。魔力が霧散していく。また、爆裂魔法を放てなかった。 *** 宿に戻ると、カズマの泣き声が廊下中に響いていた。メグミンは部屋のドアを開けた。 カズマはベッドの上で泣き叫んでいた。顔が真っ赤で、涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。 「カズマ……」 メグミンは胸が痛んだ。カズマを抱き上げる。カズマは一瞬泣き止んだが、またすぐに泣き始めた。 「すまなかった。もう大丈夫だ」 メグミンはカズマを揺すった。だが、カズマは泣き続けた。 おむつを確認した。濡れていた。メグミンは急いでおむつを替えた。それでもカズマは泣き止まない。 ミルクを作って飲ませようとした。カズマは哺乳瓶を叩き落とした。ミルクが床にこぼれた。 「カズマ、落ち着け!」 メグミンは焦った。カズマの泣き声がどんどん大きくなっていく。 メグミンはカズマを抱きしめた。強く、しっかりと。 「私が悪かった。もう置いていかない」 カズマの泣き声が少しだけ弱まった。 「許してくれ、カズマ」 メグミンは囁いた。カズマは彼女の胸に顔を埋めた。泣き声が徐々に小さくなっていく。 「もう大丈夫だ。私はここにいる」 カズマはしゃくりあげながら、泣き止んだ。メグミンはカズマの背中を優しく撫でた。 「本当にすまなかった」 メグミンは心から謝った。カズマは彼女を見上げた。涙で濡れた目が、メグミンを見つめている。 「私は……自分勝手だったな」 メグミンは認めた。爆裂魔法への執着が、カズマを傷つけた。 *** 午後、メグミンはカズマを抱いてギルドに向かった。冒険者たちの視線が痛い。 受付嬢のルナが声をかけてきた。 「メグミンさん、朝は大変でしたね」 「ああ……すまなかった」 メグミンは頭を下げた。ルナは優しく微笑んだ。 「赤ちゃんは手がかかりますからね。でも、ちゃんと戻ってきて偉いですよ」 「偉くなんかない。私は……」 メグミンは言葉を切った。カズマが彼女の服を掴んでいる。 「育児は大変です。でも、メグミンさんなら大丈夫ですよ」 ルナの言葉にメグミンは複雑な表情をした。 ギルドの片隅で、アクアとダクネスが待っていた。 「聞いたわよ、メグミン。やらかしたんだって?」 アクアがにやりと笑った。メグミンは睨んだ。 「黙れ。お前が世話を引き受けていれば、こんなことには――」 「私は引き受けてないもの。くじで負けたのはメグミンよ」 アクアは楽しそうだった。ダクネスが口を開いた。 「メグミン、爆裂魔法を諦めるのか?」 「諦めない。ただ……」 メグミンはカズマを見た。 「一週間だけ、我慢する」 アクアとダクネスは驚いた顔をした。 「本気?」 「本気だ」 メグミンは真剣だった。 「私は紅魔族だ。爆裂魔法は私の全てだ。だが……」 メグミンはカズマを抱きしめた。 「カズマは仲間だ。一週間くらい、我慢できる」 アクアは口を開けたまま固まった。ダクネスは感心したように頷いた。 「メグミン、お前は成長したな」 「成長などしていない。ただ、優先順位をつけただけだ」 メグミンは強がった。だが、その目は優しかった。 「まあ、良いんじゃない? メグミンらしくないけど」 アクアが肩をすくめた。 「私らしくなくて結構だ」 メグミンは二人に背を向けた。 「帰る。カズマが疲れている」 「ちょっと、もう帰るの?」 「ああ。カズマには静かな場所が必要だ」 メグミンはギルドを出た。 *** 部屋に戻ると、メグミンはカズマをベッドに寝かせた。カズマは疲れ切った顔をしている。 「今日は散々だったな」 メグミンはカズマの頬に触れた。柔らかくて温かい。 「私のせいだ。すまなかった」 カズマは何も言わなかった。ただ、メグミンを見つめている。 「一週間、爆裂魔法を我慢する。これは私の責任だ」 メグミンは宣言した。カズマの目が少しだけ揺れた。 「お前のせいだからな」 メグミンは呟いた。だが、その声には非難の色はなかった。 「お前が元に戻るまで、私は爆裂魔法を封印する」 カズマは小さく手を動かした。メグミンの指に触れようとしている。 メグミンは手を差し出した。カズマの小さな手が彼女の指を掴んだ。 「約束だ。一週間、私はお前の世話に専念する」 カズマの手が、ぎゅっとメグミンの指を握った。 メグミンは微笑んだ。 「その代わり、元に戻ったら覚えていろよ。お前は私に大きな借りを作ったんだからな」 カズマは何も答えなかった。ただ、メグミンの指を握り続けた。 「さて、夕食の準備をしないとな」 メグミンは立ち上がろうとした。だが、カズマが彼女の指を離さなかった。 「離してくれないと、料理ができないぞ」 カズマは首を振った。メグミンはため息をついた。 「わかった。抱いたまま料理する」 メグミンはカズマを抱き上げた。カズマは満足そうな顔をした。 「本当に手のかかる奴だ」 メグミンは文句を言いながらも、カズマを優しく抱いていた。カズマは彼女の胸に顔を埋めて、安心しきった表情を見せた。 「お前のせいだからな」 メグミンは再び呟いた。だが、その言葉とは裏腹に、メグミンはカズマを優しく抱きしめた。
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