## Chapter 12: 迷子のカズマ メグミンは朝、眩しい朝日を浴びながら目を覚ました。隣には、すやすやと眠るカズマの愛らしい寝顔。昨夜は、カズマが言葉にならない言葉で一生懸命気持ちを伝えようとしてくれた。その気持ちに応えようと、メグミンも精一杯言葉を尽くした。言葉は通じなくても、心が通じ合えたような、そんな温かい夜だった。 「…おはよう、カズマ。今日も、一緒に頑張ろうな」 メグミンは、そう囁きながら、カズマの頬をそっと撫でた。カズマは、うっすらと目を開け、メグミンを見ると、とびきりの笑顔を見せた。その笑顔を見た瞬間、メグミンの心は決まった。 (そうだ、カズマを元の姿に戻すんだ。それが、今の私にできることだ) メグミンは、ベッドから飛び起きると、大切に保管していた月光草を取り出した。昨日、疲労のあまり隠してしまった月光草。今朝は、迷いなく解毒薬作りに取り掛かろうと決意したのだ。 しかし、月光草を手に取った瞬間、メグミンの脳裏に過去の失敗が蘇ってきた。以前、爆裂魔法の威力を高めるために調合した薬が、全く違う効果を発揮してしまった苦い経験。あの時のように、またカズマに何かあってはならない。 (…だ、大丈夫。今回は、ちゃんとウィズに教わった通りにやるんだから…) メグミンは、自分に言い聞かせながら、薬草を刻み始めた。しかし、手が震えて、なかなか上手く刻めない。お湯を沸かす際も、手が滑って鍋を落としそうになった。 (…だめだ、落ち着かないと…) メグミンは、深呼吸を繰り返したが、心臓のドキドキは収まらない。焦れば焦るほど、手が震えて、集中できない。 「…っ、くそ…」 メグミンは、苛立ちを隠せずに、小さく舌打ちをした。このままでは、また失敗してしまうかもしれない。 (…一旦、気分転換が必要だ…) メグミンは、そう判断すると、カズマを抱き上げた。「カズマ、ちょっとだけ、お散歩に行こうか」 カズマは、メグミンの腕の中で、きゃっきゃと笑っている。その無邪気な笑顔を見ていると、メグミンの心も少しずつ落ち着いてきた。 「…よし、少しだけだからな」 メグミンは、そう言うと、カズマを連れて、宿を出発した。 街に出ると、すぐに人だかりができた。 「あら、可愛い赤ちゃんね!」 「メグミンさんの赤ちゃん?おめでとうございます!」 人々は、口々にそう言いながら、カズマに手を伸ばしてくる。カズマの愛らしさに、誰もがメロメロになっているようだ。 「あ、ありがとうございます…」 メグミンは、少し照れながら、頭を下げた。最初は戸惑っていたものの、これだけ多くの人に祝福されると、まんざらでもない気分になってくる。 (…ふふ、やっぱり、カズマは可愛いな) メグミンは、カズマを抱きしめながら、得意げな表情を浮かべた。まるで、自分が産んだ子供のように、誇らしい気持ちなのだ。 しかし、その時、メグミンはふと、あることに気が付いた。周りの人々に気を取られて、カズマから目を離してしまっていたのだ。 「…カズマ?」 メグミンは、カズマの名前を呼んだが、返事はなかった。周りを見渡しても、カズマの姿は見当たらない。 (…え?どこ?カズマ!?) メグミンの顔から、さっと血の気が引いた。まさか、こんな人混みの中で、カズマが迷子になってしまうなんて。 「か、カズマ!カズマ!どこにいるの!?」 メグミンは、大声でカズマの名前を叫びながら、人混みを掻き分け始めた。しかし、どこを探しても、カズマの姿は見つからない。 (…どうしよう…どうしよう…) メグミンは、パニックになりながら、街中を走り回った。カズマがいなくなってしまったら、自分はどうすればいいのだろうか。 (…私が、ちゃんと見ていれば…) メグミンは、自分の不注意を激しく後悔した。カズマを、あんなに可愛いカズマを、自分のせいで迷子にしてしまった。 「カズマ!お願いだから、どこかにいて!」 メグミンは、涙目で、必死にカズマを探し続けた。街の人々に声をかけ、カズマの特徴を伝え、情報提供を求めた。 しかし、誰もカズマの行方を知らない。時間だけが過ぎていき、メグミンの絶望感は増していくばかりだった。 (…もうだめだ…) メグミンは、膝から崩れ落ちそうになった。もう、カズマを見つけることはできないかもしれない。 その時、メグミンの耳に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。 「…あー、あー」 その声は、カズマの声だった。 メグミンは、ハッと顔を上げ、声のする方へ駆け出した。人混みを掻き分け、路地裏へ進むと、そこには、確かにカズマの姿があった。 カズマは、路地裏の隅に座り込み、小さな声で泣いていた。 「…カズマ!」 メグミンは、叫びながら、カズマに駆け寄った。そして、カズマを抱きしめ、顔を埋めて泣いた。 「…よかった…本当に、よかった…」 カズマは、メグミンの胸の中で、安心したように笑った。その笑顔を見た瞬間、メグミンの心から、全ての不安が消え去った。 「…もう、絶対に離さないからな」 メグミンは、カズマを強く抱きしめながら、そう誓った。 しかし、その時、メグミンは、あることに気が付いた。カズマを抱いているのは、自分ではない。 恐る恐る顔を上げると、そこには…

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