Chapter 6: 回復と新たな日常
朝の光が部屋に差し込んだ。メグミンは目を覚ました。隣にはカズマが眠っていた。穏やかな寝顔だった。
メグミンはカズマの額に手を当てた。熱はなかった。完全に下がっている。
「良かった……」
メグミンは安堵のため息をついた。カズマは大丈夫だ。もう心配ない。
カズマが目を覚ました。メグミンを見上げて、小さく笑った。その笑顔は健康そのものだった。
「お前、もう大丈夫なんだな」
メグミンは呟いた。カズマは手を伸ばしてメグミンの髪を掴んだ。
「痛い」
メグミンは顔をしかめた。だが、嬉しかった。カズマが元気になった証拠だ。
メグミンはカズマを抱き上げた。軽い。相変わらず赤ん坊の身体だ。だが、昨日までの弱々しさはなかった。
「今日はウィズの店に行く。お前の容態を報告しなければならない」
メグミンは宣言した。カズマは何も言わなかった。当然だ。赤ん坊だから。
メグミンはカズマの世話をした。おむつを替えて、ミルクを飲ませた。カズマは素直に飲んだ。昨日までとは大違いだった。
「やはり、体調が悪かったんだな」
メグミンは納得した。カズマは満足そうな顔をしていた。
ウィズの魔道具店は静かだった。メグミンはドアを開けた。カズマを抱いている。
「おはようございます、メグミンさん」
ウィズが笑顔で迎えた。メグミンは頷いた。
「おはよう、ウィズ」
「カズマさんの容態はいかがですか?」
ウィズは心配そうに尋ねた。メグミンはカズマを見せた。
「熱は下がった。もう大丈夫だ」
「それは良かったです!」
ウィズは安堵の表情を浮かべた。カズマに近づいて、額に手を当てた。
「本当ですね。もう熱はありません」
「副作用は完全に収まったのか?」
メグミンは尋ねた。ウィズは頷いた。
「はい。もう心配ありません。あとは時間が経てば、元の姿に戻ります」
「それはいつだ?」
「あと数日です。早ければ三日、遅くとも五日で」
ウィズは説明した。メグミンは計算した。もう四日が経過している。あと三日から五日。一週間という予定通りだ。
「わかった。ありがとう」
メグミンは礼を言った。ウィズは優しく微笑んだ。
「いえいえ。それより、メグミンさん、大変でしたね。一人で看病なさって」
「別に大変ではなかった」
メグミンは強がった。ウィズは困ったように笑った。
「無理をなさらないでくださいね。あと数日です。頑張ってください」
「ああ」
メグミンは頷いた。カズマはウィズを見上げていた。ウィズは優しくカズマの頭を撫でた。
「カズマさん、もうすぐ元に戻りますよ」
カズマは何も言わなかった。ただ、ウィズを見つめていた。
メグミンは店を出た。朝の街は静かだった。宿への帰り道、メグミンはカズマを見下ろした。
「あと数日で元に戻る。そうしたら、この奇妙な生活も終わりだ」
メグミンは呟いた。カズマはメグミンを見上げていた。
「お前は元に戻ったら、この一週間のことを覚えているのか?」
メグミンは尋ねた。カズマは答えなかった。赤ん坊だから答えられない。
「まあ、いい。お前が元に戻れば、全て元通りだ」
メグミンは言った。だが、心の奥で何か引っかかるものがあった。元通り。本当にそれでいいのか。
メグミンは首を振った。余計なことを考えるな。カズマは仲間だ。大切な仲間だ。それ以上でも、それ以下でもない。
部屋に戻ると、メグミンはカズマをベッドに寝かせた。カズマは元気そうだった。手足をバタバタと動かしている。
「お前、随分と元気になったな」
メグミンは呟いた。カズマは笑った。
メグミンは部屋の片付けをした。この数日間、カズマの看病で部屋が散らかっていた。ミルクの瓶や、使ったおむつや、濡れた布が散乱している。
メグミンは一つ一つ片付けた。カズマはベッドの上で大人しくしていた。
「お前が大人しくしていてくれると助かる」
メグミンは言った。カズマは何も言わなかった。
メグミンは部屋を見回した。だいぶ片付いた。あとは床を掃除するだけだ。
メグミンは雑巾を手に取った。床を拭き始める。
その時、背後で音がした。
メグミンは振り返った。
カズマがいなかった。
ベッドが空だった。
「カズマ!?」
メグミンは慌てた。部屋を見回す。カズマはどこだ。
床に目をやった。
カズマがいた。
四つん這いになって、部屋の隅に向かって這っていた。
「お前……!」
メグミンは驚愕した。カズマが動いている。自分の力で。
カズマはハイハイをしていた。
メグミンは呆然とした。今まで、カズマは自分で動けなかった。抱かれるか、寝かされるかだった。
だが、今、カズマは這っている。
「いつの間にそんなことができるようになったんだ……」
メグミンは呟いた。カズマは部屋の隅に辿り着いた。そこに置いてあったメグミンの杖に手を伸ばす。
「待て!」
メグミンは駆け寄った。カズマは杖を掴んだ。
「それは危ない!」
メグミンは杖を取り上げた。カズマは不満そうな顔をした。
「お前、動けるようになったのか」
メグミンは尋ねた。カズマは答えなかった。当然だ。
メグミンはカズマを抱き上げた。カズマは抵抗した。暴れる。
「お前、何をする気だ」
メグミンは困惑した。カズマは床を指差した。降ろせということか。
「駄目だ。お前は大人しくベッドにいろ」
メグミンはカズマをベッドに戻した。カズマは泣き出した。
「泣くな」
メグミンは言った。だが、カズマは泣き続けた。
メグミンはため息をついた。これは大変なことになった。
メグミンの予想は当たった。
カズマは這い回るのをやめなかった。
メグミンが目を離すと、すぐにベッドから降りて部屋中を這い回った。
「待て!」
メグミンは追いかけた。カズマは早い。小さな身体で器用に這っていく。
カズマは窓際に辿り着いた。カーテンを掴む。
「それを引っ張るな!」
メグミンは慌てて駆け寄った。カズマはカーテンを引っ張った。カーテンが落ちそうになる。
メグミンはカズマを抱き上げた。カズマは泣いた。
「お前は何でそんなに動き回るんだ!」
メグミンは叫んだ。カズマは泣き続けた。
メグミンはカズマをベッドに戻した。カズマは泣き止まなかった。
「わかった、わかった」
メグミンは諦めた。カズマを床に降ろす。カズマはすぐに泣き止んだ。そして、また這い始めた。
メグミンは頭を抱えた。
「これは……今までとは違う大変さだ」
カズマは好奇心旺盛だった。
部屋にあるものすべてに興味を示した。
メグミンの靴を舐めようとした。
「汚い!」
メグミンは取り上げた。カズマは泣いた。
メグミンのマントを引っ張った。
「破れる!」
メグミンは引き離した。カズマは泣いた。
メグミンの帽子を被ろうとした。
「大きすぎる!」
メグミンは奪い取った。カズマは泣いた。
「お前は何でも触ろうとするんだ!」
メグミンは疲れ果てた。カズマは這い続けた。
カズマは机の下に潜り込んだ。メグミンは覗き込んだ。
「そこで何をしている」
カズマは何かを掴んでいた。メグミンの爆裂魔法の研究ノートだった。
「それは駄目だ!」
メグミンは慌てた。カズマはノートを開こうとしている。
「待て!」
メグミンは机の下に手を伸ばした。カズマはノートを掴んで離さない。
「離せ!」
メグミンは引っ張った。カズマも引っ張った。
ノートのページが破れそうになった。
「やめろ!」
メグミンは叫んだ。カズマは驚いて手を離した。そして、泣き出した。
メグミンはノートを確認した。破れていない。良かった。
カズマは大声で泣いていた。メグミンは罪悪感を覚えた。
「すまない……怒鳴るつもりはなかったんだ」
メグミンはカズマを抱き上げた。カズマは泣き続けた。
「これは私の大切なノートなんだ。破られたら困る」
メグミンは説明した。カズマは泣き続けた。
「わかった、わかった。もう怒らない」
メグミンはカズマを揺すった。カズマは徐々に泣き止んだ。
メグミンはため息をついた。
「お前が動けるようになると、こんなに大変なのか……」
昼食の時間になった。
メグミンはカズマにミルクを飲ませた。カズマは素直に飲んだ。
「せめて、食事の時は大人しくしてくれ」
メグミンは願った。カズマは何も言わなかった。
ミルクを飲み終えると、カズマはまた這い始めた。
「お前……」
メグミンは諦めた。カズマを追いかけるしかない。
カズマはドアの方に這っていった。メグミンは慌てた。
「そっちは駄目だ!」
メグミンは駆け寄った。カズマはドアに手を伸ばした。
「外に出たいのか?」
メグミンは尋ねた。カズマはドアを叩いた。
「わかった。少しだけだぞ」
メグミンはカズマを抱き上げた。ドアを開ける。
廊下には誰もいなかった。メグミンはカズマを床に降ろした。
カズマはすぐに這い始めた。廊下を探索するように。
「待て、遠くに行くな」
メグミンは追いかけた。カズマは楽しそうに這っていく。
階段のところまで来た。カズマは階段を見下ろした。
「危ない!」
メグミンはカズマを抱き上げた。カズマは不満そうな顔をした。
「階段は危険だ。転んだらどうする」
メグミンは説明した。カズマは理解していないようだった。
「部屋に戻るぞ」
メグミンはカズマを部屋に連れ戻した。カズマは泣き出した。
「泣くな。外は危険なんだ」
メグミンは言った。だが、カズマは泣き続けた。
メグミンは頭を抱えた。これは本当に大変だ。
午後になった。
メグミンは疲労困憊だった。カズマを追いかけ回すのに疲れた。
カズマは相変わらず元気だった。部屋中を這い回っている。
「お前、少しは休まないのか」
メグミンは尋ねた。カズマは答えなかった。這い続けた。
メグミンはベッドに座った。少し休もう。
カズマはメグミンの足元に這ってきた。メグミンのブーツを掴む。
「またそれか」
メグミンはため息をついた。カズマはブーツを引っ張った。
「お前は本当に何でも触るんだな」
メグミンは呟いた。カズマは楽しそうだった。
メグミンはカズマを見つめた。赤ん坊の姿だが、中身は元のカズマだ。意思疎通ができないだけで。
「お前は今、何を考えているんだ?」
メグミンは尋ねた。カズマはメグミンを見上げた。
「この状況をどう思っている? 赤ん坊になって、私に世話されて」
カズマは何も言わなかった。ただ、メグミンを見つめていた。
「お前が元に戻ったら、この一週間のことをどう思うんだろうな」
メグミンは呟いた。カズマはメグミンのブーツから手を離して、メグミンの手を掴んだ。
メグミンは驚いた。カズマの小さな手が自分の手を握っている。温かかった。
「お前……」
メグミンは言葉に詰まった。カズマはメグミンの手を握ったまま、笑った。
メグミンは胸が熱くなった。この感覚は何だ。
「お前が元に戻ったら……全て元通りになる」
メグミンは呟いた。カズマは笑い続けた。
「それでいいんだ。それが正しい」
メグミンは自分に言い聞かせた。だが、心の奥で何かが引っかかっていた。
夕方になった。
カズマはようやく疲れたのか、動きが鈍くなった。メグミンは安堵した。
「やっと落ち着いたか」
メグミンはカズマを抱き上げた。カズマは抵抗しなかった。
メグミンはカズマをベッドに寝かせた。カズマは目を閉じた。眠るのか。
「今のうちに夕食の準備をしよう」
メグミンは立ち上がった。だが、カズマがメグミンの服を掴んだ。
「何だ?」
メグミンは振り返った。カズマは目を開けていた。離すなという意味か。
「わかった。少し待て」
メグミンはカズマを抱き上げた。カズマは満足そうな顔をした。
「お前は甘えん坊だな」
メグミンは呟いた。カズマは何も言わなかった。
メグミンはカズマを抱いたまま、夕食の準備を始めた。片手では難しい。だが、カズマが離れようとしない。
「お前のせいで料理ができないじゃないか」
メグミンは文句を言った。カズマはメグミンの服を掴んだまま離さなかった。
メグミンは諦めた。片手で料理をするしかない。
簡単なスープを作った。パンを温めた。カズマは大人しくしていた。
「せめて、料理の時は大人しくしてくれ」
メグミンは言った。カズマは何も言わなかった。
夕食ができた。メグミンはカズマをベッドに寝かせた。今度はカズマは抵抗しなかった。
メグミンは一人で夕食を食べた。カズマは静かに眠っていた。
「今日は本当に疲れた」
メグミンは呟いた。だが、カズマは無事だ。それが一番大切だ。
メグミンは食事を終えた。皿を片付ける。カズマはまだ眠っていた。
メグミンは窓の外を見た。夕日が沈んでいく。一日が終わる。
「あと数日でお前は元に戻る」
メグミンは呟いた。カズマは眠り続けていた。
「そうしたら、この奇妙な生活も終わりだ」
メグミンは言った。だが、心の奥で寂しさを感じた。なぜだ。
メグミンは首を振った。余計なことを考えるな。
夜になった。
メグミンはカズマの隣に横になった。カズマはまだ眠っていた。
メグミンはカズマを見つめた。穏やかな寝顔だった。
「お前が動けるようになって、今日は大変だった」
メグミンは呟いた。カズマは眠り続けた。
「でも……お前が元気になって良かった」
メグミンは認めた。カズマの手を握る。小さくて、温かい。
「あと数日だ。お前は元に戻る」
メグミンは言った。カズマは何も言わなかった。
「そうしたら、お前はまた私をからかうんだろうな」
メグミンは苦笑した。カズマはいつもメグミンをからかう。爆裂魔法のことや、貧乏なことや、様々なことで。
「それでいい。それが普通だ」
メグミンは言った。だが、心の奥で何かが引っかかっていた。
メグミンはカズマを抱きしめた。カズマは眠ったまま、メグミンの服を掴んだ。
「動けるようになるとこんなに大変なのか」
メグミンは呟いた。疲労が襲ってきた。目が重い。
メグミンは目を閉じた。カズマの温かさが心地よかった。
「おやすみ、カズマ」
メグミンは呟いた。
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